鉄道員

ブームから遅れること数年。浅田次郎の「鉄道員」を読みました。本屋に行くと夏の100冊とか帯が巻かれた単行本があったので買いました。
私は短編小説が好きです。毎日一話ずつ読みきれるし、短編独特の濃度というか密度のような物があるからです。
浅田次郎は初めて読んだのですが、とてもよかったです。映画化もされた表題作も感動的でしたが、私はラブレターという短編にとても感動しました。解説を読むとこの短編は鉄道員と1,2を争う人気で、どちらかと言うと女性に人気の作品のようです。とても感動的な話で、ここにあらすじを書いても仕方ないのですが、なんとなくかきます。

主人公は何十年も歌舞伎町でヤクザな仕事をして暮らしている中途半な男だ。何度目かの留置所から出た日に刑事から奥さんが死んだと告げられる。男は所帯を持っていなかったので驚いたが、死んだ奥さんというのは、ヤクザに頼まれて偽装結婚した中国人女性だとすぐに知らされる。戸籍上は夫婦であり、遺体の引取りと火葬等の手続きをヤクザに頼まれ、ヤクザの子分とともに気が進まない仕事に向う。その道中で中国人女性が男に宛てた手紙を読み、長年の歌舞伎町生活で腐りきった男の心が動き始める。遺体との対面、火葬、お骨になった女を膝に抱え歌舞伎町へ帰る道中、男の心は大きく揺さぶられる。
その力となった女からの手紙がなんとも切なく、悲しい。とてもとても、切ない。悲しい。
そんな話です。私はこういう話に弱い。